近年、アメリカを中心に注目されている住まい方に、ADUがあります。
ADUとは、Accessory Dwelling Unitの略で、母屋とは別に設けられる小規模な二次的住居のことです。
一般的には、キッチン、浴室、トイレ、寝室、専用出入口などを備え、母屋とは一定の独立性を持った住まいとして使われます。
アメリカでは、住宅不足の解消、家賃収入の確保、多世代同居、親族の近居などを目的に、ADUを制度として活用する地域が増えています。
では、日本でもADUのような住まい方は可能なのでしょうか。
日本では、建築基準法上、いわゆる一敷地一建物という考え方が基本にあります。
正確には、建築基準法施行令において、敷地は「一の建築物」または「用途上不可分の関係にある二以上の建築物」のある一団の土地とされています。
つまり、同じ敷地内に複数の建物を建てる場合でも、それらが用途上不可分であることが重要になります。
たとえば、母屋と物置、母屋と車庫のような関係であれば、母屋に付属する建物として整理しやすい。
しかし、キッチン・浴室・トイレを備え、単独で生活できる建物になると、単なる「離れ」ではなく、独立した住宅と判断される可能性があります。
その場合、原則としてその建物にも専用の敷地が必要となり、さらに接道義務の問題が出てきます。
建築物の敷地は、原則として建築基準法上の道路に2m以上接している必要があります。
これは、避難、消防、救急、通行、安全性などを確保するための重要なルールです。
仮に広い敷地の奥に、もう一軒の小さな住宅を建てたとします。
その住宅が将来的に他人へ売却された場合、道路に接していない「未接道の住宅」になってしまう可能性があります。
これが、日本でADU型の住まいが簡単に認められにくい大きな理由の一つだと考えられます。
ここで考えたいのは、ADUを「単独で売却できる住宅」としてではなく、母屋に付属する売却不可の二次的住居として制度設計できないか、という視点です。
たとえば、次のような条件をセットにする方法です。
このような制度整理ができれば、日本でもADU的な住まい方を再検討できる余地はあるのではないでしょうか。
日本では、過疎化、空き家の増加、高齢単身世帯の増加、家族の距離感の変化が進んでいます。
かつての二世帯住宅は、一つの大きな家の中で親世帯と子世帯が暮らす形が中心でした。
しかし、現代では「同居」よりも「近居」のニーズが高まっています。
親の近くに住みたい。
でも、同じ家の中では近すぎる。
子ども世帯を支援したい。
でも、完全に家を分けるほどの土地や資金はない。
こうした課題に対して、母屋の敷地内に小さな住まいを設けるADU的な発想は、非常に現実的な選択肢になり得ます。
ADU的な住まい方は、相続対策の観点からも重要です。
地方や郊外には、広い敷地を持て余している住宅が多くあります。
一方で、新たに宅地分譲するには接道、造成、インフラ、分筆、費用の問題があります。
そこで、既存の母屋を残しながら、敷地内に小さな二次的住居を設けることができれば、家族内での住まいの選択肢が広がります。
ただし、ここで重要なのは、単に建てられるかどうかではありません。
将来的に売却できるのか。
相続時にどう評価されるのか。
第三者に賃貸できるのか。
接道を満たさない建物をどう扱うのか。
これらを制度として整理しなければ、日本版ADUは普及しにくいでしょう。
ADUは、単なる「離れ」ではありません。
住宅不足、家族の近居、高齢者の住まい、相続、空き地活用を同時に考えるための、新しい住宅制度の考え方です。
日本では現行制度上、一敷地一建物、用途上可分・不可分、接道義務などの課題があります。
しかし、分筆と接道義務を同時にチェックし、単独売却できない二次的住居として制度設計することができれば、日本版ADUの可能性は十分に議論する価値があります。
過疎化が進む日本。
家族が離れて暮らす時代。
高齢者が一人で住む時代。
そして、広い敷地や空き家をどう活かすかが問われる時代。
いまこそ、日本に合ったADUのあり方を考えるべきではないでしょうか。
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